白椿沙羅のおとぎ草子

白椿沙羅のおとぎ草子

知恵の種

ある時、宇宙でお釈迦さまが星から星へと遊行しておりました。そうしますと、生き物が住めない泥水にまみれた星を見つけました。お釈迦さまはしばらく目を細め、生き物が住めない泥水の星を眺めて考えておりました。光と空気はあるが水と土が汚れている。生き物が住めるようにならないかと考えました。お釈迦さまは、手の平を口の前に持ってきて息を吹きかけました。手の平から種が一粒現れて泥水に落ちて沈んでゆきました。

種は泥水の底まで沈んでゆき、底にある泥にたどり着くとさらに泥の中へと埋もれてゆきました。種は、空気も水も栄養も少なく光も届かぬ泥の中でもがき苦しみました。種は、長い間泥の中で苦しみ、考えました。どうにかして光と空気のあるところへに行きたいと願いました。そうしましたら、種から根が出てきました。種は、自分の根に穴を8つ開けて空洞をつくり自分の根に空気が行き渡るようにしました。8つの穴が開いた根は少しずつ成長しました。成長していくと、根は泥からようやくでることができました。泥の上は泥水でした。種は、汚れいる水を得る事ができました。種は、苦しくて明るい水面の先にある光と空気を求め、根から茎を生やしました。茎にも穴を開けて根に空気を送りました。少ない栄養と水と空気で、少しずつ、ゆっくりと、泥水の中の苦しみから這い出るように明るい水面へと伸びてゆくのです。

種は、長い時間をかけて成長し、ようやく明るい水面へと這い出ることができました。種の茎が水面から出た時に、種は眩しい光と豊富な空気に歓喜しました。その喜びは形となって、何とも愛らしい丸い蕾になりました。光を浴びた蕾にそっと風が吹きました。蕾の花びらが一枚ずつ開いてゆきます。花が咲きました。その花の中には種がいくつもありました。

お釈迦さまは、長い間その種が花を咲かせる様子をずっと見守っていました。花の中の種を見たお釈迦さまは、その種にそっと手をかざし、泥水まみれの星のあちこちに種を撒きました。そうしましたら、泥水まみれの星のあちこちに花が咲きました。花の中には、種と共にあらゆる生き物が入っており新しい命が生み出されました。生き物が住めなかった泥水まみれの星は、花が咲き、生き物が住める美しい星になりました。

お釈迦さまは、その美しい花の星を見て柔和に目を細め、星から星への遊行を続けるのでした。

 

 

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